意地悪な副社長との素直な恋の始め方
プレ花嫁になる
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シゲオと共に訪れた都心のブライダルサロンは、ドレスショップと一体になっていて、通りに面したウィンドウには『Claire』のウエディングドレスが飾られていた。
雑誌の表紙を飾ったのと同じもので、改めて見てもやっぱりすごくステキだ。
「やっぱりステキよね?」
「うん」
「ドレスというより、もはや芸術作品だわ」
「うん」
シゲオと頷き合いながら、扉を開けて中へ入れば、そこは別世界。
アンティーク風の内装の店内には、様々な色のドレスがずらりと並び、シューズ、手袋、ティアラやイヤリングなどといった小物もおしゃれに陳列されていた。
装飾の美しい大きな鏡がいくつもあり、気になるドレスをすぐに試してみることができるようだ。
にこやかに出迎えてくれたスタッフへ、流星と待ち合わせているのだと告げ、バックヤードにいるらしい彼を待つ間、店内をざっと見て回る。
「こういうところに入るの初めてなんだけど、すごい数のドレス……」
「そうね。でも、『YU-KI』が経営するブライダルサロンの中でも、ここは小さい方よ?」
「え。そうなの?」
「扱っているドレスは最高ランクだけど。いわゆる、セレブ御用達ね」
「ってことは、レンタルでもお高いのか……」
「何を言ってるのよ! ここにあるのは、レンタルドレスじゃないわよ。いわば実物見本。体型や好みに応じて細かな調整をするセミオーダーメイドのドレス。もちろん、フルオーダーメイドを希望する場合は、デザイナーも紹介しているわ」
「……シゲオ、よく知ってるね?」
「これから仕事をする取引先のことを調べるのは、当たり前でしょ! 偲月。アンタ、のほほんとドレスを着ればいいだけだと思ってるの!?」
「そ、そんなこと思って……たけど。スミマセン……」
シゲオにじいっと見つめられ、嘘を吐くのは諦めた。
「まったく……アンタって、小心者のくせに大雑把なんだから」
「そこに因果関係はないんじゃ……」
「何か言った!?」
「イイエ……」