意地悪な副社長との素直な恋の始め方


「正式なお披露目までは、社外秘だからな」


極秘で空輸されて来たというドレスが三着、トルソーを飾っている。

深い森を思わせる緑は、シンプルなオフショルダーのマーメイドライン。
海を思わせる青は、グラデーションと贅沢なフリルが美しいプリンセスライン。
そしてシルバーの生地に華やかな赤い薔薇が散りばめられた黒いシフォンを重ねたAライン。

どのドレスも個性的で、とても美しく……着てみたい、と思わせる。


「ステキねぇ」

「うん、すごく」


シゲオと二人、うっとり眺めていると流星に「仕事しろ、仕事!」と言われる。


「仕事って、ドレスを見るよう言われただけなんだけど……?」

「写真を撮って送ってほしいとデザイナーに頼まれてる。試着してもらうぞ」

「え! でも、」

「着てみなさいよ。わたしも、その方がメイクのイメージを掴みやすいし」


正式な契約も交わしていないのに、こんなことしてもいいのだろうかと思わなくもなかったが、人前で披露するわけでもないし、流星とシゲオの勧めに乗っかることにした。

流星とシゲオが部屋を出るのと入れ違いに、着替えを手伝ってくれる店舗スタッフが総レースの真っ白な下着と共に現れる。


「こちら、タイアップ予定のインナーです」


ブラとニッパー、ビスチェ、ガードルなど各種ドレスに応じたブライダルインナーは、『avanzare』のデザイナーのパートナーの作品だ。


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