意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「ひゃっ……ちょ、やめっ……やめてってばっ!」
耳に息を吹きかけられては、笑わずにはいられない。
しかもどさくさに紛れて頬にキスまでされた。
「なっ……! い、いまっ! いまっ……」
「これくらい、海外じゃ挨拶だ、挨拶。よし、こんなもんだろ」
「ええ、バッチリ撮れたわ……送信っ! と……。あら、まちがって朔哉にも送っちゃったわぁ。どーしましょ……ま、いっか」
「えっ!? いま、朔哉に送ったって言ったっ!? ま、いっかって、いくない!」
「騒ぐなよ。どうせあとで報告するんだ。手間が省けてよかったぜ。サンキュ」
「そうよねー。わたし、グッジョブ! 本日の目的、第一弾はクリアしたし、次行きましょ。次」
「だな」
「ぐ、」
「さっさと着替えろよ。偲月」
「ちょっと、ま……」
次の予定なんて聞いてないと訴える間もなく、二人は部屋を出て行ってしまった。
(ぐ……グッジョブじゃない! シゲオぉーっ! しかも、次!? 次って、なに!? 行くって、どこへよぉぉー?)
「チャペルだと思います」
「チャペル……?」
「名前くらいはご存じだと思うんですけれど……、間もなくリニューアルオープンを予定している、『ザ・クラシック』の挙式用チャペルです」