意地悪な副社長との素直な恋の始め方
イングリッシュガーデンへの入口、白薔薇のアーチの傍にはスマホを片手にファイルを抱えた芽依がいた。
芽依の呟きで、わたしが追って来たことに気づいたのだろう。
ようやく朔哉が振り返る。
「このあと、打ち合わせがある。込み入った話なら流星に」
「そんなに、込み入った話には……ならい」
朔哉の肩越しに、わたしを見つめる芽依と目が合った。
彼女がどうしてここにいるのか。
あの告白を聞いても、朔哉の芽依に対する気持ちは何も変わらなかったのか。
だから、わたしとはちがい、芽依とは簡単に仲直りできたのか。
訊きたいことが次々溢れ出す。
でも、いま言いたいのは、別のこと。
本当に知りたいのは、朔哉と芽依のことなんかじゃなくて、わたしと朔哉のことだ。
「全力で……口説くって言ったじゃない」
「…………?」
怪訝な顔をする朔哉に、歩みより、そのネクタイをぐいっと引っ張る。
「何を……」
「狙った取引相手を落とせなかったことは一度もないって言ったくせに」
「あれは…………どんなことにも、例外はある」
「嘘つき」