意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「それは……言えなかったのは、自分のせいだってお兄ちゃんは言ってたよ」
「わたしのせいでもあるよ」
「そういうところ……簡単に人のせいにしないのは、二人とも似てるね。だからかな。お互いのことがよくわかるの」
「そんなことない。朔哉のことなんて、ぜんぜんわからない」
「ふふ。お兄ちゃん、素直じゃないから……。でも、偲月ちゃんもそうだから、やっぱり似た者同士だね」
「……かも」
芽依は、滲んだ涙をハンカチで押さえると、ホテリエの手本となるようなきれいな笑みを見せた。
「いますぐには、無理だけど。時間が掛かってしまうかもしれないけれど。でも、いつか……いつか必ず、心から、偲月ちゃんとお兄ちゃんのことお祝いできるようになるから。だからまた……わたしの妹になってくれる?」
芽依のようにきれいに泣く技術を持たないわたしは、ジーンズのポケットの奥でくしゃくしゃになっていたハンカチで、涙と鼻水を拭う。
「……うん。ありがとう」
「もー、偲月ちゃんってば、せっかくの美人が台無し」
「だ、だって……」
「月子さんから、泣き方教わった方がいいよ? さすがに、鼻水啜ってる花嫁はダメだと思うから」
「うん……」
「わたし、ここのオープニングスタッフのトレーニングしてるの。プレオープンでは、ブライダルのサポートに入る予定。ばっちり偲月ちゃんのサポートするから、任せてね!」
「芽依がいるなら、心強い……」
「緊張も忘れちゃうくらいのステキな式にしてみせるから、楽しみにしてて」
「うん。そうする」