意地悪な副社長との素直な恋の始め方
――愛の告白!? それは、ノロケのようなものですか?
『そんなカワイイものじゃなかったわよ。まるでプロポーズ』
『クレア! そんな大げさに言わなくても……』
『大げさどころか、控えめに言ってるわよ。シェイクスピアも真っ青の愛の名言集だったわねぇ……』
――愛の名言。参考までに、お伺いしても?
『もちろんよ、彼女は……』
『クレア! 余計なことは言わなくていい! 予定では、今回のプロジェクト、独占契約に至った経緯を話すはずだったのでは?』
――そうですね。ちょっと話がそれてしまいました。以前、クレアさんは日本企業からのオファーを断り続けていたそうですね? 『Claire』のドレスを気に入ってくれたのではなく、そのブランド名を利用したいだけ。そんな思惑が透けて見えるから、というのが理由だったと言われていますが……。
インタビュアーは、朔哉の要求を呑み、あっさり話題を変えた。
この記事が掲載されるのは『YU-KI』傘下の出版社が発行する、ブライダル情報誌。
彼女がそこの社員なら、朔哉は直接ではないが、上司にあたる。
クレアさんも、その辺は承知の上なのか、あっさり引き下がった。
『ええ。わたしやスタッフたちが、一着一着のドレスに込めた情熱や想いを理解できない相手に、大事な作品を預ける気にはとてもなれなかったの』
何社かと契約直前まで行ったらしいが、いざ蓋を開けてみたら、彼女の要望を無視する内容になっていた……という経験をし、契約交渉の場を設けるだけ無駄だと諦めたらしい。
『でも、朔哉は明らかに彼らとはちがった。ドレスの完成を心待ちにして、暇さえあればサロンに立ち寄る朔哉なら、そんなことはしないと信じられたわ。彼から、日本のブライダル市場、花嫁の好みも変わりつつあって、セミオーダーやフルオーダーを希望するひとも増えていると聞いていたしね。でも、朔哉がやらかさなければ、「YU-KI」と契約を結んで、こうして日本に進出することにはならなかったでしょうねぇ……』
――夕城副社長がやらかした……って、何をですか?
『朔哉ってば、彼女の誕生日にプロポーズしようとして、逃げられたのよ』
『クレア!』