意地悪な副社長との素直な恋の始め方
花嫁、花婿に逃げられる


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『ザ・クラシック』のプレオープン当日。

模擬挙式と模擬披露宴を祝うような快晴だ。
青空の下、鮮やかな色彩に覆われたイングリッシュガーデンが美しい。

控室の窓の外をぼんやり見つめながら、さまざまな魔法を駆使するシゲオの指示にしたがって、唇を薄く開ける。

メイクが終わったら、今度はドレス。
あのブライダルサロンで着付けを手伝ってくれたスタッフの手を借りて、『Claire』のウエディングドレスを纏う。

背面に蝶や薔薇などのモチーフが散りばめられているので、それを見てもらうためにベールはなし。
低い位置でまとめられた髪には、イングリッシュガーデンで摘まれた薔薇が飾られている。


「できました。ほんと……似合いますねぇ」

「ありがとうございます」

「ほんと美しい花嫁だわぁ。わたしって、天才かしら……」


自画自賛するシゲオにツッコもうかと思ったが、鏡に映った自分を見て、やめた。

シゲオが言う通り、彼は天才だ。


「……本物のモデルみたい」

「何、アホなこと言ってるのよ! アンタ、モデルでしょ!」

「そ、そうだけど……これ、雑誌とか載ってもいいくらいのレベル」

「だから! 雑誌ならもう載ったじゃないの!」

「そうだけど、」

「あの時は、ゲストの目がなかったし、森の中というシチュエーションに沿ったナチュラル寄りのメイクだっただけ。本来は、これくらいきっちりするものよ」

「そうなの?」

「ええ。だって、二時間近く鉄壁の笑みを貼り付けて、どこからどう撮られても粗がないようにしなきゃいけないんだから」

「どこからどう撮られてもって、大げさな……」


今回の模擬挙式、模擬披露宴の様子は、広告用に撮影されることになっているが、ドレスの撮影は別日に設定されていて、チャペルやバンケットルームなど、全体の雰囲気を伝えるのが目的だと聞いている。


「アンタねぇ! 巨匠、流星天監督が撮るっていうのに、中途半端なメイクが許されるわけないでしょ!」

「は? 流星監督?」


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