意地悪な副社長との素直な恋の始め方
エピローグ

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模擬挙式、模擬披露宴から一転、本物の挙式と披露宴になったあの日から、はや半年。

リニューアルオープン後の『ザ・クラシック』の経営はいまのところ順調すぎるくらい順調のようだ。

電撃結婚、『Claire』のカラードレス、新井月子の再婚、そして引退発表――盛りだくさんの話題を提供したこともあり、色んな番組、雑誌、WEBサイトなどで取り上げられ、宣伝効果はばっちり。
HPへのアクセス数も宿泊予約数も、伸びる一方だ。

特に、ブライダルの予約は好調で、一年を通して来年末まであっという間に埋まったらしい。

そこまで人気となったきっかけは、やはり『Claire』のドレスだろう。
もともと『Claire』のドレスには人を惹きつける魅力があり、人気がある。
それに加え、クレアさんと朔哉の対談記事が、人気に拍車をかけたのはまちがいない。

プレオープンの直後に発売された結婚情報誌には、なぜか朔哉が手を入れた記事ではなく、透子さんが翻訳した記事――わたしが読んだものが掲載されていた。
なぜ記事が差し替わったかというと……夕城社長の『こっちの方が断然面白いでしょ。僕なら、こっちの記事が載ってる雑誌を買うね』という鶴のひと声があったから。

夕城社長の言葉どおり、雑誌の売り上げは倍増した。

掲載された記事を見て、なぜそうなったか理由を知った朔哉は、社長室に殴り込みをかけに行ったらしいが。

そして、模擬挙式(本物)の動画が、さらに人々の興味を煽った。

模擬挙式、模擬披露宴の様子を紹介する動画は、監督の細かな指示に発狂しそうになりながら、流星が七転八倒して作成しただけあって、映画のようなステキな仕上がり。テレビCMも大好評だ。

しかしHPの訪問数が爆発的に増えたのは、『ザ・クラシック』のHPを訪れた人だけが見られる『模擬挙式のディレクターズカット版』が面白いとSNS上で紹介されたことがきっかけだ。

なんと、あの時、ゲストがはけたチャペル内で言い合うわたしたちの様子を撮影したものに、流星と悪ノリした透子さんが勝手に字幕を挿入したものをこっそり作成していたのだ。

二人は、わたしたちへの結婚祝いのつもりで作成したらしい。
しかし、ビデオレターにしようとした流星がインタビューをお願いした際、動画を見た夕城社長がひと言。

『なんでこんな面白いものを紹介しないの? もったいないでしょ! みんな見たいでしょ。僕も見たいんだから』

というわけで、公開されることとなった。
息子のプライドより、ホテルの売り上げが大事――優しい夕城社長だが、ビジネスにはとことんシビアだ。

朔哉は、しばらくこの動画の存在に気づいていなかったようだが、福山さんの『動画見た~! ちょーウケるぅ』というメッセージで発覚。激怒した朔哉が、自らHPより削除したらしい。
すでに、いろんなところに拡散しているので、手遅れではあるが……。


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