意地悪な副社長との素直な恋の始め方


「なあ、偲月。本当に……全部食べるのか?」

「だって! 最初は、もちろん季節限定のマロン味を食べるでしょ。そしたら次は定番の抹茶味を食べたくなるでしょ? でもって、次はフランボワーズで甘酸っぱさを堪能するでしょ? で、その次は濃厚なチョコが食べたくなる。でも、やっぱりあっさりしたものがいいかもしれないと思って、シトロンにいくでしょ。それから……」

「もういい、わかった。好きなだけ食べてくれ」

「朔哉も欲しい? ピスタチオならあげてもいいよ?」

「あとで恨まれたくないから、いらない」

「恨んだりしないってば! また買ってきてくれればいいんだし」

「おまえ……だんだん母さんに似て来たな」

「え! ほんとっ!? 嬉しい!」

「褒めてない」

「えー? だって、あんな大女優でこの世のものとは思えない美人な月子さんに似ているなんて、褒め言葉以外の何物でもないでしょ」

「顔が似ているとは言っていない」

「ちょっと、どういう意味っ!?」

「そのまんまの意味だ」

「朔哉!」

「……なあ、偲月。おまえ、太ったか? 心なしか……頬がふっくらしている」


鋭い朔哉の観察眼に、ギクリとした。

最近、体重が増えた。

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