意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「……気のせいでしょ」
「胸も大きくなった」
「なんでわかるのよ!」
「毎晩触っていれば、わかるだろ」
「……いつ触ってるのよ? まさか寝ている時?」
「重要なのは、そこじゃない」
「変態」
「……で、最後に生理があったのはいつだ?」
「せっ……も、もうちょっとオブラートに包んだ言い方を……」
「最後に、月経があったのは?」
「オブラートに包んでない!」
「いいから、答えろ」
「たぶん……」
「たぶん?」
「二か月前?」
昔から、ストレスなどで、生理不順になることがよくあったので、二か月程度の遅れは気にしていなかったのだが、朔哉の顔色が変わる。
「出かけるぞ」
「どこへ?」
「病院だ」
「え。でも別にどこも悪くないし……」
「いいから!」
「でも、マカロンが……」
「帰ってきてから食べればいいだろっ!」
「そんな、怒んなくてもいいじゃない……」
「……マカロンが気になる偲月の方が、どうかしている」
「でもさ、もう夕方だよ? 受付終わってるんじゃない?」
普段から超が付くほど健康で、滅多に風邪も引かないため、病院にかかるのはちょっぴり苦手だ。
しかし、尻込みするわたしにもお構いなしに、朔哉はタクシーを呼び、テキパキと出かける準備をする。
「車で行かないの?」
「冷静に運転できる自信がない」
「大げさな……病気じゃないってば」
「病気じゃないのはわかってる」
「え、じゃあ病院行かなくても……」
「偲月!」
こちらを振り返った朔哉は、いまにも癇癪を爆発させそうだ。
彼がここまで余裕なく怒るのは、珍しい。
「わざとか? わざと俺をイラつかせてるのか?」
「そんなことしないって。朔哉じゃあるまいし」
「本気で、思い当たらないのか?」
「思い当たるって?」
「もういい……タクシーが来た。行くぞ」
「ねえ、」
「黙れ」
三十分後。
立見先生のお母さんが経営しているというレディースクリニックにやって来たわたしは、驚きの診察結果を聞かされた。