意地悪な副社長との素直な恋の始め方
おまけ2:いつか、家族になる日
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(……当分、抜けられそうにないな)
待ち合わせの時刻、五分前。
芽依が勤めるホテルのロビーに足を踏み入れた瞬間、予定通りにはいかないと諦めた。
チェックインを待つゲストが溢れかえっている。
空港からのアクセスもよく、家族向けのサービスが充実しているこのホテルは、国内外の旅行客に人気がある。
が、普段はここまで混雑することはない。強風のせいで、運航ダイヤが乱れた影響だろう。
バゲージカートに大きな荷物を次々載せるベルボーイ。
予定変更を余儀なくされたゲストのリクエストに、最大限応えるべく電話しながらパソコンを操るコンシェルジュ。
ラウンジのウエイトレスは、走り回る子供たちの合間を縫うようにして、イライラしているゲストにコーヒーとスイーツを配っている。
とっくに勤務時間が終わっているはずの芽依は、ブラックスーツに身を包み、長い髪を上品な夜会巻に纏めた完璧なホテリエ姿でフロントに立っていた。
にこやかに、しかし手際よく押し寄せるゲストをさばいている。
(元気そうだな)
一年ぶりに会う妹が、以前と変わらず、生き生きと働いている様子にホッとした。