意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「メイにとって、この世で一番イイ男は『お兄ちゃん』だそうだ。優しくて、頭がよくて、スポーツ万能で、カッコよくて、いつでも彼女を守ってくれる。もしも、シヅキがいなければ、自分は『完璧な兄』であるサクヤしか知らずに終わっただろうと言っていたよ」
母が父と離婚して、家を出た時、寂しさに押し潰されずに済んだのは、芽依がいたからだ。
常にまわりの人間の顔色を窺い、なかなか打ち解けてくれなかった芽依が、自分には心を開き、頼りにしてくれるのが、嬉しかった。
必要とされることで、自分はいらない存在ではないのだと思えた。
だから、兄らしい兄でいたかった。
自慢できる兄でありたいと思っていた。
大事に、真綿に包むようにして、妹を守ってやりたいと思っていた。