意地悪な副社長との素直な恋の始め方
おまけ3:正しい妻の愛し方

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日本へ向かう飛行機の中、ゆったりのんびりしている暇はなかった。

可能な限りの仕事を片付けるべく大量のメールに返信し、報告書、各種データを分析し、調査や新たなプロジェクトの指示を下す算段をつける。

明日は、何としても休みを確保したかった。
たとえ一日遅れの誕生日祝いでも、何もしないよりはマシだ。

千陽を連れて出かけるのもいいが、いくら義父母の手助けがあると言っても、ずっとワンオペ状態が続いている偲月には息抜きも必要だろう。

添い寝しているうちに、いつの間にか寝落ちしているとボヤいていたが、気づいていないだけで、精神的にも相当疲れているはずだ。


(千陽はオヤジと母さんに預けるとして……半日が限度か。撮影スポットにでも、ドライブがてら出かけようか)


少し北へ向かえば、まだ桜が見られるはずだ。
インターネットで候補になりそうな場所を検索していると、父からメールの返信が届いた。
ダニエルからの伝言を伝えたのはほんの数分前だ。芽依のこととなると、相変わらず行動が早い。


(『ダニエルくんは、お婿さんになってくれると思うか』だって? 芽依が頼めば、了承するかもしれないが……) 


ダニエルは、ウォード一族の有力な後継者候補のひとりではあるが、彼のほかにも候補は山ほどいる。
本人次第で婿入りも可能だろうが、始終顔を突き合わせ、牽制されるのはこちらが煩わしいので遠慮したい。

父には、『ビジネスの側面からも婿入りは望ましくないと思うし、芽依が日本ではなくあちらで暮らしたいと望むかもしれない』と返しておいた。

どこにいても、どれだけ離れていても、芽依が――たったひとりの「妹」が、幸せになれる場所にいるのなら、それでいい。

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