意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「ち、千陽!? どうしたんだ? いったい、何が……偲月っ!」
一体、何がどうして愛娘に全身反り返るほど拒絶されなければならないのか。
まったく理解できず、パニックになる。
「あー、やっぱダメかぁ……はいはい、大丈夫だから。泣かないの」
偲月は、泣き叫び、助けを求めて手を伸ばす千陽を抱き取ると、その背を軽く叩いて宥めた。
「偲月……何なんだ……」
泣きたいのはこっちの方だと思いながら説明を求めると、肩を竦めて何でもない事のようにあっさり原因を明かす。
「どうも人見知りが始まっちゃったみたいで。この場合、パパ見知りか」
「パパ見知り……?」
「しばらくすれば慣れると思うから」
「しばらくとは、どれくらいだ?」
「うーん。すぐに慣れることもあれば、数か月かかることもあるみたい。嫌がられない程度にスキンシップをするとか、短時間抱っこするとか、ちょっとずつ接点を増やしていけば、いずれ大丈夫になるものだって」
「…………」
成長するにつれ、好奇心と共に他人への恐怖心、警戒心が生まれ、人見知りをする場合もあることは、知識としては知っていた。
が、まさか自分もその対象になるなんて、思っていなかった。