意地悪な副社長との素直な恋の始め方

*****


朔哉が時折利用しているというスーパーマーケットは、駅とマンションのちょうど中間地点にあった。

生鮮食品から生活用品まで、輸入食材も含めて品ぞろえが豊富な店は、身なりからしてセレブな客で賑わっている。


(た、高い……高すぎる……)


どんな料理に使うのか見当もつかないおしゃれな名前の野菜も、これまたおしゃれに陳列され、なんと二パックで五百円もする納豆が平置きで積まれていて驚いた。

無農薬、有機栽培、無添加、こだわりの飼料等々、身体に良いのはわかるが、庶民に生まれついたわたしには、特別な日にだって買ったことがないものばかり。
朔哉の経済力を心配する必要はないとわかっていても、手に取った品を気軽にカゴへ入れられない。
二百グラムで千円もするひき肉なんて、もはやひき肉ではないのではないかと思う。

それなのに、朔哉は「あ、これも美味そうだな」なんて言って、輸入物のパスタやチーズ、一パック二千円もするタマゴを無造作にカゴに入れようとする。


「ちょ、ちょっと待ってよ、朔哉! そんな無計画に買っても、食べきれなかったから、勿体ないでしょっ!」

「食べたいと思うものを買って何が悪い? そもそも偲月は、少食じゃないだろ? 一日五食は食べるよな?」

「いつの話をしてるのよっ! そりゃあ、高校生の頃は、三食だけじゃ足りなくて、人生でMAXの体重だったけど! でも、大人になってからはそんなに食べてないっ!」

「だから、抱き心地が悪くなったんだろう。もうちょっと太れ」

「はぁっ!?」


< 76 / 557 >

この作品をシェア

pagetop