意地悪な副社長との素直な恋の始め方

美味しい料理より魅力的なもの

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朔哉に同行してやって来た入社式会場のホテルは、ロビーからして高級感が漂っている。
もちろん、バンケットルームも贅沢な造りで、カーペットはふかふかだし、そこかしこにグリーンが置かれ、ウッディな天井が美しい。

しかし、何よりも目を惹くのは、大きな窓から一望できる大パノラマだ。
周囲にはホテルより高層の建物はなく、ビル群の向こうにそびえる山並みまで見渡せる。

そんな会場にひしめくのは、百名を超す新入社員たち。
リクルートスーツに身を包み、期待と不安の入り混じった表情で、社長と副社長から歓迎と激励の言葉を聞く姿は初々しい。

就活戦線脱落組のわたしは、激戦を勝ち抜いて採用された正社員たちから二か月遅れで入社したため、入社式はもちろん、新入社員のためのレクリエーションや研修にも参加していないので、新鮮な光景だった。

正しく「同期」と呼べる存在もおらず、仕事の愚痴を言い合い、励まし合い、時には競い合い――やがて戦友となる仲間に出会える彼らが、ちょっぴり羨ましくもある。

式のプログラムは、短時間、かつあまり堅苦しくならないよう配慮されているのが窺えるものだった。

社長と副社長の挨拶に始まって、各部署の紹介、社内サークル、福利厚生など、仕事の厳しさよりも楽しさを強調するような内容は、早期退職者を出さないため、という意図も含まれているかもしれない。

会社も、人と人の繋がりでできている。

ミスマッチは、早い段階で解消するに越したことはないが、せっかく結んだ縁だ。お互いにとって、有益なものとなるよう努力し、歩み寄るのも大事なことだと思う。