恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
アルは商人に向かって言った。
「この話は、なかった事にしていただけませんか?」
そしてテレーサの方をむいた。
「テレーサ様、
車の修理費が相当かかるので、
私が知っている宝石商の所で見てもらいましょう。
よろしいですね」
テレーサには何も言わせないというように、強い口調でいった。
<とにかく自分の主人をカモにするのは許せない。>
アルは決断していた。
「どうぞ、お引き取りを・・
玄関までお見送りをいたします」
その引かない態度に、商人は愛想笑いをしながら立ち上がった。
「また、何かありましたら・・
お声をかけてください。
テレーサ様」
商人は<余計な事をしやがって>というようにアルをにらみつけて、
玄関から出て行った。
アルはその姿を見送ると、
すぐにテレーサのいる応接室に戻った。
「出過ぎたまねをして・・申し訳ありませんでした」
そう言うと、
テレーサに向かって頭を下げた。
テレーサは微かだが、横に首を振った。
それは否定の意味のようだった。
そしてふうっと息を吐いて、
ブローチを手に取った。
「・・修理費になるくらいのお金が・・・出る物でしょうか?」
「もちろんです」
アルは笑顔で答えた。
修理費の20倍以上で売る自信が
ある。