恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
アルは早口で言った。
「車の修理部品が・・
請求書が出ましたので、急ぎで持ってきましたが・・・」

が、
視線はテーブルの上の固く干からびたパンに向いた。
「ええとですね、食事はこれだけですか・」
テレーサが小さくうなずいた。

「食わなきゃだめでしょうが!」
アルが思わず大声をあげた。

その声の大きさに、
テレーサの肩がびくっと上がった。

「食事がこれだから、だめなんだ!
まったく、あんたは領主としての
自覚がない!!」

そう言いながら、
アルは昔、
同じことを教師に言われたことを思い出していた。

あの時は酒を飲んで、遊びほうけていたが・・・

王族としてふさわしい行動をしなさい
自覚がなさすぎる・・・・
それこそ何回言われたか・・

テレーサはアルの剣幕に少し驚いたようで

「でも、修道院では・・これくらいで・・」

「ここは修道院ではありません!
領主が不健康では務まらんでしょう!!」
叱られてテレーサはうつむき、
ショールの端を握りしめていた。

この館に料理人はいない。
テレーサが一人で住んでいるのだ。

アルはもう一度、鳥のエサのような皿を見た。
「食事は俺が作ります。待っていてください」

「でも・・今日はお休みで・・」
テレーサは小さい声で言った。

「関係ないです。俺の意志ですから」
アルはそう言うと
足早に温室を出て行った。

その静けさの中、
オルゴールの音色が響いた。


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