恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
<ブランシュール城・台所・16時>

館の台所は大きかった。

昔はここも活気があったのだろう。大きな銅製の鍋やフライパンが
いくつも壁にかかっている。
貯蔵庫も大きい。

「まず、ここからだな」
アルはエプロンをつけて、たわしを握った。

取りあえず
夕食の支度ができるくらいにはしておきたい。

シチューの下ごしらえをしつつ、
アルは掃除に集中していた。

明日はダイアナに頼んで、手伝いの村人を手配しよう。
窓ガラスも拭きたい。

アルの頭は
すぐに次の段取りを組むため、
フル回転していた。

気が付くと、
テレーサが台所の扉の所に立っていた。
アルはふきんで手を拭きつつ、
テレーサの方に歩いていった。

テレーサが少し、後ずさりをした。

俺って・・
怖がられているのか・・
まぁ、ここは女子修道院だからな


「テレーサ様、
夕食はシチューにします。
よろしいですか?」

「その、今日は安息日なので・・
ロランドさんも休んでいただかないと・・」

テレーサが少し生気を帯びているように感じる。
やはり飯を食ったからか・・

「ああ、大丈夫です。俺は好きでやっているので」

アルが聞いた。
「食事はどこでなさいますか?
準備をしますから」

テレーサは考えるようだったが
「あの・・温室が一番暖かいので・・
食堂は暖炉が(すす)で詰まって使えないのです」

「温室って・・
明かりがないでしょう?」
暗闇で飯は食えないぞ・・・・
「ろうそくを使えば・・・」

アルはとりあえず
テーブルクロスらしき大きい布を探し出し、温室のテーブルに広げた。

テレーサが燭台(しょくだい)を持ってきた。
誰かが言っていた。
仲良くなるには同じ釜の飯を食え・・・

女が男を落とすには
まずは胃袋をつかめと・・・
食事は重要だ。
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