恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
主人と使用人が、通常は同じテーブルにつくことはない。

アルはそれを無視して、
二人分のカトラリーや皿をテーブルに並べた。
「同席させていただきます。
テレーサ様」

テレーサは戸惑いを見せたが、
微か(かすか)にうなずいたように見えた。

アルはテレーサの正面に座った。

蘭の馥郁(ふくいく)たる香り・・・
温室のガラス窓が、ろうそくの明かりでキラキラ光る。

ろうそくがゆらめく中、
シチュエーションとしてはロマンチックだ・・
アルは思った。

女とこんな風にゆっくり食事をしたのは、いつだったろうか。

酒があるともっといいが・・
そのうちこの館で探し出す!

修道女の祈りは長かったが、
アルは満足をしていた。

テレーサは一口食べて、微か(かすか)に微笑んだような表情をした。
「あの、とてもおいしいです。
ロランドさん」

うまい食事は人の心を和らげる。
アルの経験だった。
「それはよかったです」

「私、こうやって男の人と
一緒にお食事をしたのは・・・
初めてで。」
テレーサの爆弾?発言に、
アルは思わずスプーンを落とした。

姫君は絶対に、
男を知らない・・純潔の・・
処女だ!!

絶滅危惧種が、目の前に生息している。

「ロランドさん?」
テレーサは、不思議そうにアルを見た。

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