恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)

ブランシュール城・数日後・13時 17-21ページ

<ブランシュール城・数日後13時>

暇があると、アルは館のいろいろな部屋を調べ歩いた。

資産調査という名目の、酒探しでもあった。
値打ちのある物、そうで無い物と
仕訳をして、財産目録をつくらねばならない。

昔は本当に栄華を極めたのだろう、特に何代か前の領主は
絵のコレクターだったようだ。

一部屋がまるまる、絵の保管・収蔵庫のようになっていた。
そのうち、専門の鑑定士を呼ばなくてはならないな
アルはそう思いながらも、何枚かの絵を廊下に出した。

1枚の絵は・・
たぶん昔のブランシュール家の家族を描かせたものだろう。
19世紀初頭の頃だ。

子どもたちと母親、白と黒の(ぶち)の狩猟犬が木陰で寝そべっている。
母親が花かごを持って草むらに座り、両脇に子どもが同じように座って、母親に笑顔をむけている。

子どもたちは、ブランシュールの
群青の瞳と銀灰色の髪をしていた。

裕福で見るからに幸せそうに見える・・感じさせる絵だった。

もう1枚はまだ中年とは言えないが、女性の肖像画だった。

漆黒の髪が豊かに波打ち、黒目勝ちのきつい感じのする美人だ。
華やかなドレスといくつもの宝石を身にまとい、微笑んでいる。

レースの扇を広げ、
いかにも夜会なら一番に注目を浴びそうな容姿だった。
 
アルはその2枚を玄関ホールに出した。
テレーサにブランシュール家に関係する物かどうか、確認をしなくてはならない。

その他数点、この館を描いた風景画も出しておいた。

テレーサが階段から降りて来た。

今日は灰色の服だ。
そもそも彼女は黒か灰色しか身につけない。
修道女時代を、そのまま引きずっている。
アルは食事の次は、服装を変えなくてはならないと思った。

美しい女主人は、
俺のモチベーションを上げる重要な要素だ。

ただ、宝石を売りに行った時の反応を考えると、
意外と難しいかもしれない・・・
そう考えながら
アルはテレーサに声をかけた。

「テレーサ様、絵を見ていただきたいのですが・・
保管するか、売ってもいいのか俺では判断がつかないので」

アルの声掛けに
テレーサは少し反応して、うなずいた。

玄関ホールの壁に
何枚かの絵を立てかけるように置いていく。
そして
1枚ずつ埃除けの白い布を、取り外していくと・・・

テレーサの足が止まった。

あの漆黒の髪の美人の肖像画の前・・・・

群青の瞳が大きく見開かれ、口に手をあてた。
ヒュー
テレーサの喉が鳴った・・・
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