恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
「燃やした!・・・のですか・?」
「ええ、あなたには必要ないと
思いましたから」
アルはまったく事務連絡のように
言い、そばに置いてあるストールをテレーサに渡そうとした。
その瞬間
アルの手首をテレーサの片手が触れ、次に強くつかんだ。
テレーサはうつむき唇をかみしめて、
何かをこらえるように肩を震わせている。
アルは抱きしめたいと一瞬思ったが、思い直した。
そしてテレーサのつかんでいる
手の上に、もう片方の自分の手を置いた。
「あなたは・・
もう一人ではありません。
何があっても俺が守りますから」
その言葉で、テレーサの手の力が緩み、外れた。
「・・・ありがとうございます」
しばらくはうつむいていたが
アルを見上げたその群青の瞳は、
涙で揺れているように見えた。
それは夜明け前の空のように
美しい色だ・・・
アルは感じていた。