恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)

ブランシュール城・リエットの訪問 29-31ページ

<ブランシュール城・果樹園・15時・リエットの訪問>

チャリティーバザーから数日後

アルは洗車を終えて、ガレージの裏手の果樹園の方に歩いて行った。

もし、ママレードの商売が軌道にのるなら、加工工場を作らねばならない。
現金収入の道ができれば、男も村に戻ってくるだろう。
アルは敷地の端に沿って歩きながら、計画を練っていた。

果樹園の入り口に女が立っている。

リエットだった。
リエットは商売用のにこやかな笑顔で、手を振った。

「こんにちは、アルバートさん」

アルも渋い顔をしながら、
リエットに軽く会釈をした。
「やぁ、これは・・何の用事かな」

すると
リエットはふてくされ気味に
「せっかくいい話を持って来たのに、歓迎をしてくれないの?」

「その、いい話ってのは?」
リエットは商売と駆け引きが
上手い事を、アルは知っていた。

女狐め・・

リエットはじらすように言った。

「ママレードの売り込み先を、
いろいろ紹介しようと思って
わざわざ来たのに・・」

<わざわざ>を強調しての言い方に、
アルは反応し警戒モードで答えた。

「ああ、それはありがたい」

アルのそっけない答えに、
リエットは頬を膨らませた。
「なに、それ?
ずいぶんつれない返事ね」

そう言うや否や・・
リエットは、いきなりアルの足を
引っかけて倒した。

果樹園の下は、まだ柔らかい草で
覆われているので、怪我はしなかった。

アルが仰向けに倒れこみ、
そのままリエットは、上に馬乗りになった。
そして両手で彼の肩を押さえこんだ。

アルは迷惑そうに、小さい声で

「やめてくれ・・ここはまずいだろ・・」
リエットはアルの表情を見て、
紅い唇を尖らした。

「質問に答えてくれれば、やめるけど」

アルは、リエットに押さえこまれる形だったが、
特に抵抗はしなかった。
リエットは、されるがままのアルを見て言った。

「ブランシュールのお姫様とは、
どこまでいってるの?
何が目的なの?」

アルは、リエットの頭上に実っているオレンジを見て答えた。


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