恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
「何もしていない・・手をだしていない」

リエットはあきれた顔をした。
「なにそれ?・・嘘つき!
あなたが手を出さないはずはないでしょう?」

リエットの顔がアルに近づく。

「俺は彼女の教育係だから・・
この領地を立て直すために・・」

リエットがにっこりほほ笑んだ。
「じゃぁ、どうやったら子どもが
生まれるかも・・教えるのね・・」

リエットが体の位置を少しずらした。

「その・・相当に・・まずいのだが・・・」
アルの困惑を見て、リエットは楽しんでいるように笑った。

「なにをあせっているのよ。
さんざんやってきたくせして」

リエットの顔がさらに近づき、
高級な香水が強く香る。

ふと、
リエットが、何かに気が付いたように顔を上げた。
そしてアルの肩から手を離し、
体を起こして立ち上がった。

「まぁ、ブランシュールさん、
こんにちは」

テレーサが果樹園の入り口で
かごを手に・・立っていた。

リエットは商売用のにこやかな
笑顔と共に、
テレーサに向かい歩き出した。

アルはまだ、倒れたままだったが・・・
テレーサの方を見る勇気がなかった。

「ママレードのお客様の紹介で
来たのだけれど、
果樹園に案内をしてくれる所で、
ロランドさんが滑ってしまって・・」

<滑ったわけじゃない!!
倒されたんだ!>
アルは心の家で叫んでいた。

これだから女は恐ろしい・・・
アルの心臓が縮みあがった。

「ブランシュールさんに、直接お渡ししておきますわね。
顧客リストを。
あちらで説明をしますわ。
よろしいかしら。」

リエットはアルをちらっと見たが、テレーサを連れて行ってしまった。

アルは、そのまま果樹園の下草の
上に横たわっていた。

姫君はどこまで見ていたのか
わからないが。

リエットはおもしろがって、
わざとやったのだろう・・・
アルは立ち上がり、土や草を払った。

いたずらをする女狐を、駆除しなくてはならない。
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