恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
管理官はうやうやしくテレーサに
向かって頭を下げ
「それではブランシュールさん、
お騒がせをして失礼いたしました」

大きな玄関扉が音を立てて、
閉まった。

静まり返った玄関ホールには、
テレーサとアルが残された。

テレーサは近くの椅子に座り込み、そして最初に口を開いた。

「ごめんなさい・・
勝手なことをして・・
でも、
私は、あなたがここにいてくれることを・・望んでいるのです」

言い終わると
テレーサはうつむいて、椅子のひじ掛けを握りしめていた。

アルも、テレーサの隣の椅子に座り込んだ。

「いえ、署名は俺の意志ですから・・
でも養子っていうのは・・」
アルは混乱していた。

こんな方法を取るなんて・・

「リエットさんは、
あなたがこの国に残る方法は
二つあると言いました。
一つは結婚です。・・
でも相手が・・・必要です」

テレーサが大きく息を吐いて

「もう一つが養子になること。
養子であれば、あなたは好きな人と結婚はできます」

テレーサは最後に、振り絞るように言った。

「私は先代の奥様に、
お前の血は汚れているから、
結婚をしてはいけない、
生きる価値がないと、言われ続けました・・

だからロランドさんが、
この家を継いでくれるのが、
・・いいと・・
あなたの方が、この領主として、
ふさわしいと・・思っています。」

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