恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
「これがアルバート・ロランドの
書類です。
受け取りにサインをお願いします」

管理官はこの薄気味悪い場所から、早く出たがっているのがわかる。

アルは苦笑した。

女領主は、
書類を確認もせず受取書に
サインをした。

「これで手続きは終了ですね」
そして管理官に書類を渡した。
「それでは
私はこれで失礼します・・」

管理官は素早く立ち上がり、
鞄に書類を差し込んだ。
そして足早に出て行った。

残されたのは
アルと女領主だった。

アルと女領主の視線があったように思えたが・・

違う
その瞳は
群青で深い色合いだが・・
ガラス玉のように、感情が見られない。

自分を見ているけれど・・
見ていない・・
その先を、透かして見ているように思えた。

肌は白い・・
一度も日に当たった事がないように・・青ざめていた。
生きていない・・

いや死人のようで・・
もっと違う。
唇も青ざめているように見えた。

髪も銀灰色だが、
後ろでひとつに束ねて、黒いリボンをつけていた。

すべてに彼女には色彩がなく、
黒い影に見えた。
存在感がない。

痩せている・・華奢なのか・・
その指先も細く・・・
幽霊もこんな感じなのだろうか・・


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