王子と姫の狂おしい愛~結婚生活編~
「おい、あそこの席見ろよ!スッゲー美人……」
近くにいた男性客達が、話している。
椿姫達は気づかないが、二階堂だけはしっかり聞いていた。

「椿姫様、少し失礼いたします」
「うん」

二階堂は男性客の方へ、ゆっくり歩みを進めた。
「ヤバくね…!?あんな美人、この世にいるんだな……」
「なぁ、あの人確か……」
「あ、ほらっ!王子の……」

「奥様です!」
「は?お前、誰だよ…!?」
「奥様の、執事です。
貴方達みたいなタイプは必ず、椿姫様に話しかけるのでその前にお伝えしておきたくて……」
「は?な、なんだよ…!?」
二階堂の真っ黒な雰囲気に、ビビる男性客。

「お前等のような奴が、気安く話せる相手じゃない。
わかったら、もう椿姫様の事は忘れろ……!?」
と、グッと顔を近づけ耳打ちしたのだった。

「二階堂、大丈夫?」
「はい、大丈夫ですよ」
「??何かあったの?あちらの方達と」
椿姫が男性客の方を見た。
「いえ、あちらの方が落とし物をされたので、取ってさしあげただけですよ」
「そう。よく周り見てるのね!二階堂って」
「それも仕事ですから」
「そうよね。
ねぇ…二階堂」
「はい」
「いいのよ、お休みしたい時はいつでも言って。
今日だって、ついて来なくても一人で行けたし」
「そうだよね~
二階堂さんって、いつ休んでるんですか?」
「ほぼないのよ。私が言っても“いらない”としか言わないの」
小夜の問いに、椿姫が少し悲しそうに答えた。
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