王子と姫の狂おしい愛~結婚生活編~
姫は何もできない
「奥様、井高さんと不倫してるってほんとですか!?」
「は?なんですか?それ!
誤解です!そんな…不倫なんてあり得ません!」
「でも、私達の間ではその話で持ちきりですよ」
「そんな…酷い……
その話、琥珀は知ってるんですか?」
「いえ」
「そうですか…でも、どこからそんなデマ……」
「この間、井高さんとデートしてるところを見た社員がいて……」
「デート?
してませんよ!」
「え?クレープ買ってたって聞きました」
「クレープ?
あ!それなら、お買い物に連れてってもらいましたが、デートではありません」
「え?でも、奥様には執事さんがいるんじゃ……」
「その日は二階堂はお休みだったので、井高さんが連れてってくれたんです」
「でも、男性と二人でなんて…誤解されるの当たり前ですよ?」
「え……?」
「買い物くらい、一人で行ったらいいじゃないですか!?」
「え?それは……」

「奥様って、一人じゃ…なーんにもできないんですね?」

明らかな嫌みだ。
でも、椿姫は言い返せなかった。
確かに一人では、何もできないからだ。
「そう…ですね…」
「今日、一人で帰ってみたらどうですか?
ここからなら、ご自宅まで電車ですぐですよね?
きっと“お姫様”でも大丈夫ですよ!」

「わかりました。では、主人に伝えておいてください!」
椿姫は悔しさから、そのまま会場を飛び出した。

「フンッ!あーすっきりしたぁ!」


「はぁぁ?一人で?」
「はい、奥様が急にそうおっしゃって……」
「なんでお前、止めねぇんだよ!?」
「お止めしたんですが……でも、たまにはいいのでは?奥様、一人では何もできないって悩まれたから…!」

「何もできなくていいんだよ(いいんです)!?」
琥珀、二階堂、井高の声がハモった。
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