王子と姫の狂おしい愛~結婚生活編~
「あれ?ここ…どこ?」
先程の二階堂の言葉通り、何も一人でしたことのない椿姫。
案の定、道に迷っていた。

琥珀に“助けて”と電話すれば、きっと解決するだろう。
でも“奥様って、一人じゃ…なーんにもできないんですね?”が頭から離れない。

「なんか、疲れた…足も痛いし……」
悔しかった━━━━━
でも本当のことだからこそ、言い返せない。

「情けないなぁ…」
自然と涙が溢れていた。
「泣くなんて、もっと情けない…!」
でも、止まらない……
椿姫は近くの公園のベンチに座り、空を見上げた。

「……っつ…助けて……
誰か……二階堂…井高さん……
…………琥珀ぅ~助けてよ!」

「椿姫!!」
「え?空耳?
私、重症だなぁ。琥珀の声の空耳まで聞こえるようになった(笑)」

「………椿姫!!?」
「え……?琥珀?嘘……」
「よかった、早く見つかって!!」
「椿姫様……よかったぁ…」
「無事でよかったぁ……」
二階堂と井高も、心底ホッとしたように言った。

結局、私は一人では何もできない━━━━
こんな風に、助けてもらわなければ………何も…

ゆっくり、椿姫の元に向かってくる、三人。
「来ないで……」
「え……?
椿姫(椿姫様)?」
「先に帰ってて?私は、もう少しゆっくりして帰るから」
「何…言ってんの…?」
「椿姫…様…?」
「フフ…大丈夫よ…だから、先に帰っててね……」
微笑む、椿姫。

でもその笑顔は、決していつもの優しく穏やかな笑顔ではない。
それは琥珀達を、更に苦しめるだけだった。
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