おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件
 同じフロアには、私のいる販売部のほかに、通路を挟んで宣伝部もある。無音声で各チャンネルの映像が流れているテレビが数台。
 昼間は、宣伝部の面々のほとんどが席にいることはなく、事務の子が一人しかいないなんてことがよくある。それなのに、今日は珍しいことに勢揃いしているなぁ、と思ってはいた。

 突然、フロアがザワザワしはじめた。

「誰か、来てんのかな。有名人でも。」

 通路のほうに顔を向ける笠原さん。

「え、こんなとこに来ることなんか、あるんですか?」
「いやぁ、ほとんどないけど。」

 ザワザワが、女子の『キャー!』という甲高い悲鳴に変わったのは、すぐのことだった。

「な、なんだ、なんだ。」

 めったに動じない、というか反応しない楢原さんと、笠原さんが席から立ち上がった。一方の本城さんは無反応。パソコンから目も離さない。
 とりあえず、私もひょこっと通路の方に顔を出して、固まる。

 なんで?
 なんで、そこにいるの!? 
 遼ちゃんっ!!!

 そう、そこには宣伝部の部長とにこやかに話をしている相模 遼が立っていた。
 見るからに、芸能人オーラが半端ない。ま、眩しすぎるよ、遼ちゃん!

「へぇ、あの表紙やってた子か。」

 笠原さんの声が聞こえたわけでもないはずなのに、ふっと、こちらに顔を向ける遼ちゃん。たぶん、私に気付いてる。だって、口元がちょこっとだけ笑ってるもの。

「おっと。ありゃ、相当イケメンだねぇ。神崎には目の毒か?」

 いきなり後ろから大きな手で目を隠そうとする、笠原さん。

「え? え? そ、そんなことないですよ。目、目の保養っす。」

 慌てて大きな手をはずそうとして、笠原さんの手をつかむ。ふと視線を感じて遼ちゃんの方を見ると、完全に無表情になった彼がいた。

 怖いっ。
 怖いよ、遼ちゃんっ!!

 でも、それも一瞬のこと。すぐに部長と挨拶をかわして、フロアにいる社員たちに向かって手を軽く振った。

「きゃぁぁぁっ!」

 す、すごい声。よくよく見たら、別の部署の人たちもいたみたい。
 遼ちゃんたちはそのままフロアを出て行くと同時に、女子たちの悲鳴は徐々にひいていき、いつも通りの静かなフロアに戻った。
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