おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件
寒い中。とーっても、寒い中。
膝丈のスカートを風が揺らし、しっかりニ百十デニールの厚めのタイツを履いてても、足元から冷気がじわじわと上がってくる。思わず、足踏み。私の脇を、コートを羽織ったサラリーマンたちが足早に家路を急ぐ姿を目で追いながら、待つこと、三十分。
本当に来る気あるのかな? と思いつつ、スマホを確認すると、時刻はすでにニ十二時半。そりゃぁ、皆、帰ろうとする時刻だよ。眉間にシワをよせ、マフラーで顔を半分ちかく隠しながら、ふぅっ、とため息をつく。白い息が、大きく暗闇にたちのぼる。
いい加減限界。もう、帰ろうと、踵《きびす》を返したとき、一台の大きな黒いバンが目の前に止まった。窓がまっ黒で、中が見えない怪しげな車。ヤのつく職業の方が使いそうなヤバそうな車に、慌てて離れようとした時、車のドアがあき、奥の暗がりの中に、少し赤い顔の遼ちゃんがいた。
「美輪さん、ごめん!」
声を潜めて、手招きをする。
恐怖から、驚きに変わり、久しぶりに遼ちゃんに会えた嬉しさとごちゃまぜになって、心がいっぱいいっぱいで身体が動けなくなる。寒くて凍えてたせいもあるけど。
私がすぐに動かないことに、困った顔する遼ちゃん。そんな彼の様子に、つい、意地悪したくなる。顔を無表情にして、冷たい目で遼ちゃんの顔を睨みつける。
『は、や、くっ!』
「……ぷっ」
口をパクパクして、必死に手招きしている姿が、なんだか可笑しくて、笑いを抑えられなくなった。
そこに、聞き覚えのある男性の冷静な言葉がとんできた。
「神崎さん、寒いんで早く乗ってください」
運転席のドラキュラ伯爵が、私以上に無表情に見つめてきた。そうだった、そこに遼ちゃんがいるなら、運転席にドライバーがいるはず。私のことを知っている誰か、となったら、マネージャーさんが運転する以外にないのだ。
慌てて車に乗り込むと、ドアが自動で閉まった。
「本当にごめん、すっごい待たせたよね。」
申し訳なさそうに、暖かい手で私の冷たくなった頬に触れた。触れられたそこは、一瞬で熱をおびる。すぐそばに、遼ちゃんの心配そうな顔があって、一気に胸がドキドキしだす。
「ラブシーンやるなら、奥の席でお願いします」
冷静すぎるマネージャーの言葉に、二人きりじゃないということを思い出す。そして、むしろ、そこは、そんなことしてるんじゃない、と、注意するとこじゃないの? と内心ツッコミをいれる私。
「チェッ」
まさかの、舌打ちをした遼ちゃん。私の肘を軽く持つと、奥の席へと誘《いざな》った。
「どちらにいきますか」
「適当に流して」
「……はい」
偉そうな遼ちゃんに呆れる私。
ゆっくりと車が動き出す。
膝丈のスカートを風が揺らし、しっかりニ百十デニールの厚めのタイツを履いてても、足元から冷気がじわじわと上がってくる。思わず、足踏み。私の脇を、コートを羽織ったサラリーマンたちが足早に家路を急ぐ姿を目で追いながら、待つこと、三十分。
本当に来る気あるのかな? と思いつつ、スマホを確認すると、時刻はすでにニ十二時半。そりゃぁ、皆、帰ろうとする時刻だよ。眉間にシワをよせ、マフラーで顔を半分ちかく隠しながら、ふぅっ、とため息をつく。白い息が、大きく暗闇にたちのぼる。
いい加減限界。もう、帰ろうと、踵《きびす》を返したとき、一台の大きな黒いバンが目の前に止まった。窓がまっ黒で、中が見えない怪しげな車。ヤのつく職業の方が使いそうなヤバそうな車に、慌てて離れようとした時、車のドアがあき、奥の暗がりの中に、少し赤い顔の遼ちゃんがいた。
「美輪さん、ごめん!」
声を潜めて、手招きをする。
恐怖から、驚きに変わり、久しぶりに遼ちゃんに会えた嬉しさとごちゃまぜになって、心がいっぱいいっぱいで身体が動けなくなる。寒くて凍えてたせいもあるけど。
私がすぐに動かないことに、困った顔する遼ちゃん。そんな彼の様子に、つい、意地悪したくなる。顔を無表情にして、冷たい目で遼ちゃんの顔を睨みつける。
『は、や、くっ!』
「……ぷっ」
口をパクパクして、必死に手招きしている姿が、なんだか可笑しくて、笑いを抑えられなくなった。
そこに、聞き覚えのある男性の冷静な言葉がとんできた。
「神崎さん、寒いんで早く乗ってください」
運転席のドラキュラ伯爵が、私以上に無表情に見つめてきた。そうだった、そこに遼ちゃんがいるなら、運転席にドライバーがいるはず。私のことを知っている誰か、となったら、マネージャーさんが運転する以外にないのだ。
慌てて車に乗り込むと、ドアが自動で閉まった。
「本当にごめん、すっごい待たせたよね。」
申し訳なさそうに、暖かい手で私の冷たくなった頬に触れた。触れられたそこは、一瞬で熱をおびる。すぐそばに、遼ちゃんの心配そうな顔があって、一気に胸がドキドキしだす。
「ラブシーンやるなら、奥の席でお願いします」
冷静すぎるマネージャーの言葉に、二人きりじゃないということを思い出す。そして、むしろ、そこは、そんなことしてるんじゃない、と、注意するとこじゃないの? と内心ツッコミをいれる私。
「チェッ」
まさかの、舌打ちをした遼ちゃん。私の肘を軽く持つと、奥の席へと誘《いざな》った。
「どちらにいきますか」
「適当に流して」
「……はい」
偉そうな遼ちゃんに呆れる私。
ゆっくりと車が動き出す。