おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件
「りょ~~~~う~~~~!」

 地の底から這いあがるような声が、聞こえてきた。

「ひ、ひーっ!」

 地の底から現れたのは、目の座った一馬だった。

「おめー、美輪に何してやがる!」
「まだ、何もしてないよ~!」
「何かするつもりだったのかよっ!」
「ふ、ふふん、どうかなぁ?」

 いつの間にか、二人のギャーギャー言いあって追いかけっこしている姿を見てたら、ドキドキも収まった。
 どっちが保護者か、わからないな。思わず苦笑いしながら、時計を見ると終電間近。

「一馬! そろそろ帰るよ!」
「えー、帰るの~?」
「おう、帰ろう!」

 二人の声が重なった。ふふ、結局、この二人は仲がいい。

「今日は楽しかったです。ありがとう。お金は?」
「いいよ、ここは奢り。久しぶりに美輪さんとも会えて楽しかったし」

 遼ちゃん、王子様キャラ復活。

「当然だ。お前は稼いでるんだしな」

 偉そうに言う一馬に、私は苦笑い。
 まだ残るという王子様遼ちゃんに後ろ髪をひかれつつ、私たちは店を出る。
 同じように駅に向かう人の流れにのって、終電に間に合うように、少し速足で駅に向かう。

 ブルル

 マナーモードのスマホ。L〇NEの着信。
 終電だけに混みあっていたけれど、電車に乗り込んでから、確認すると『RYOTYAN』からだった。いつの間にか、一馬と私と遼ちゃんのグループができていて、そこに遼ちゃんからメッセージ。

『今日は来てくれてありがとうね~。またね~!』

 オカマ遼ちゃんを想像して、思わず笑みがこぼれた。

『こちらこそ、貴重な経験、ありがとう~。おやすみ~!』

 そう返事を書くと、すぐに私個人宛にメッセージが返ってきた。

『今度は、一馬くん抜きでご飯でも食べに行きましょう。』

 ……!?

 遼ちゃん、勘違いしちゃうからやめて。
 うれしい気持ち半分、自分がバカをみそうな気がして情けない気持ち半分。
 きっと社交辞令なんだよ、俳優の相模遼が、そんなこと言うわけないじゃない、と、自分に言い聞かせる。

 さすがに、既読は相手にもわかってるだろうから、「いつか行けるといいですね」と、無難に返しておいた。

 あ、なんだか、どよーん、だ。

 一馬もスマホをいじりながら、L〇NEの返事をしているようだったので、覗きこもうとしたら、白い眼で見ながら「……えっち」と、言われてしまった。

 えっちって、なんだよ、えっちとは。言われたことが恥ずかしくて、顔を真っ赤にしてたら、

「変なこと、想像したでしょ。やっぱり、えっち」

 一馬、覚えてなさいよ。

 変わらず真っ赤な顔で、拳をにぎるのであった
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