おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件
第10章 負けない私と人気俳優の彼
――眠れなかった。
あまりの衝撃で、まったく眠れなかった。
だって、あの『兵頭乃蒼』だよ? 宣戦布告ってヤツだよ?
遼ちゃんの鈍感さには、敬意を表する。あの涙が、『申し訳ない』だけじゃなかったってことに、気づいていなかったってこと。
正直、このまま、職場に行って仕事がまともにできるか、かなり不安だった。
そうは言っても、自分の席に座れば、身体が無意識にも動き出すのは社会人。目の下のクマは隠せてないけど、目だけは真剣。
「神崎さん、大丈夫?」
向かい側の席から心配そうに見る本城さん。
「あ、はい。すみません」
「彼氏よりも、あなたのほうが入院しなきゃいけないんじゃないの?」
……そんなにひどいですか?
本城さんには、遼ちゃんが2、3日で退院できそうな話はした(遼ちゃんについては、話してない)。よかったじゃない、とは言ってもらえたけれど、私が、こんなんじゃ、余計に心配されてしまうのも、仕方がないのか。
実際、大きなミスなく仕事は進めているけど、まるでつり橋を渡っているような不安定な気持ち。自分でも、いつ、やらかしてもおかしくない気がしてる。
「神崎さん、今日のお昼は『室町』に行こうか。」
本城さんが、パソコンの画面を見ながら言った。『室町』は、会社の近所にある料亭だ。今まで、二回ほど、ランチの時間だけれど、お疲れ様会的に連れて行ってもらったことがある。そう、若干高めなのだ。私の場合、ランチであっても、ちょっと気合を入れないと入れない、そんな感じ。
「私が奢るから」
ニヤリと笑って見せる本城さんに、男気を見る。
ううう、申し訳ないです、本城さん。
こんな私を励まそうとしてくれるのが、痛いほどわかる。
料亭につくと、すぐに広めの和室に案内される。そこに、本城さんと二人きり。
目の前の小鉢たちが、季節感あふれた色とりどりの食材に目があちこちしてしまう。
「少し早い誕生日のプレゼントも兼ねてね」
「あ、ありがとうございます。」
まさかの誕生日プレゼントに、感動。私は顔を赤くしながら、箸を進める。
「で、どうしたの?」
「あ、あはははは」
やっぱり、聞きますよね。つい、顔がひきつってしまう。
なんというか、正直、うまく話せる自信がない。
「……まぁ、無理ならいいけど」
少し寂しそうな本城さんに、申し訳なく思う私。
「ため込みすぎないでね。」
「……はい」
本当は、言ってしまいたい。
でも、一言でも言ったら自分の感情に歯止めが利かなくなりそうで怖い。
それからは他愛のない話や、仕事の話をしながら、食事を終えた。
せっかくの美味しいランチのはずなのに、まったく味わえた気がしない。まるで砂を噛んでいるようだった。
あまりの衝撃で、まったく眠れなかった。
だって、あの『兵頭乃蒼』だよ? 宣戦布告ってヤツだよ?
遼ちゃんの鈍感さには、敬意を表する。あの涙が、『申し訳ない』だけじゃなかったってことに、気づいていなかったってこと。
正直、このまま、職場に行って仕事がまともにできるか、かなり不安だった。
そうは言っても、自分の席に座れば、身体が無意識にも動き出すのは社会人。目の下のクマは隠せてないけど、目だけは真剣。
「神崎さん、大丈夫?」
向かい側の席から心配そうに見る本城さん。
「あ、はい。すみません」
「彼氏よりも、あなたのほうが入院しなきゃいけないんじゃないの?」
……そんなにひどいですか?
本城さんには、遼ちゃんが2、3日で退院できそうな話はした(遼ちゃんについては、話してない)。よかったじゃない、とは言ってもらえたけれど、私が、こんなんじゃ、余計に心配されてしまうのも、仕方がないのか。
実際、大きなミスなく仕事は進めているけど、まるでつり橋を渡っているような不安定な気持ち。自分でも、いつ、やらかしてもおかしくない気がしてる。
「神崎さん、今日のお昼は『室町』に行こうか。」
本城さんが、パソコンの画面を見ながら言った。『室町』は、会社の近所にある料亭だ。今まで、二回ほど、ランチの時間だけれど、お疲れ様会的に連れて行ってもらったことがある。そう、若干高めなのだ。私の場合、ランチであっても、ちょっと気合を入れないと入れない、そんな感じ。
「私が奢るから」
ニヤリと笑って見せる本城さんに、男気を見る。
ううう、申し訳ないです、本城さん。
こんな私を励まそうとしてくれるのが、痛いほどわかる。
料亭につくと、すぐに広めの和室に案内される。そこに、本城さんと二人きり。
目の前の小鉢たちが、季節感あふれた色とりどりの食材に目があちこちしてしまう。
「少し早い誕生日のプレゼントも兼ねてね」
「あ、ありがとうございます。」
まさかの誕生日プレゼントに、感動。私は顔を赤くしながら、箸を進める。
「で、どうしたの?」
「あ、あはははは」
やっぱり、聞きますよね。つい、顔がひきつってしまう。
なんというか、正直、うまく話せる自信がない。
「……まぁ、無理ならいいけど」
少し寂しそうな本城さんに、申し訳なく思う私。
「ため込みすぎないでね。」
「……はい」
本当は、言ってしまいたい。
でも、一言でも言ったら自分の感情に歯止めが利かなくなりそうで怖い。
それからは他愛のない話や、仕事の話をしながら、食事を終えた。
せっかくの美味しいランチのはずなのに、まったく味わえた気がしない。まるで砂を噛んでいるようだった。