おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件
 スマホの画面を見て、呆然としている俺に、隣にいたアリシアが、どうした? という顔をしてスマホを覗き込んだ。

『ワオ!』

 なんだ?
 なんだ?
 どうなってんだ?

 しばらく周りが見えなくなっていた。
 気が付くと、周りが急にお祭り騒ぎになっている。
 あ、あれ。講義中断させちゃったのに?

「Congratulations!」

 にこやかな顔で教授が近寄ってきて、急に握手をして手を上下させた。

『あ、ありがとうございます』
『この子が君の子かい?』

 ――俺の娘?

『奥さんもキュートだねぇ。すっかり母親の顔だ』

 スマホに目を落として、もう一度美輪を見た。
 久しぶりに見た美輪は、少しだけぽっちゃりとしていて、髪も少し伸びていた。
 出産後に撮ったと思われるその写真ごしでも、彼女が大仕事をやりとげたんだとわかる満足げな笑顔だった。

『ありがとう。講義中にすみません。どうぞ、戻ってください。』

 恥ずかしくなって、教授に前に戻るように言った。
 肩をトントンと叩いて『がんばれよ』的なウィンクをして戻っていく教授。それとともに教室の空気も冷静さをとり戻っていく。
 席に座って、一馬に短く返信した。

『後で、ちゃんと説明して』

 すぐさま既読がつくけれど、『美輪に聞け』と返事がきた。






 美輪からの連絡はまだ来ない。
 美輪とあの赤ん坊のことで頭が一杯で、今日はまともに講義を聞いていられなかった。
 仲間たちからは、『おめでとう』の嵐だったけど、俺の方は、まだ実感がわかない。ちゃんと美輪から説明を受けていないせいか、うまく理解できない。


 部屋に戻って、ベッドに横になった。
 今日も連絡が来ないか、と思ったら、マナーモードだったスマホが、揺れだした。
 慌ててスマホの画面を見ると、『奥さん』という文字が、美輪からの電話だと告げている。

「もしもしっ」
『……遼ちゃん?』
「ああ、どうして教えてくれなかった!」

 最初に伝えたいと思った言葉よりも、彼女を責める様な言葉の方が先に出てしまった。

『……ごめんね』
「最近、連絡が減ったから心配してたんだぞ」
『うん』
「あの、赤ん坊って」
『うん』
「……俺の子?」

 思わず、自信なさげに言ってしまった。
 いや、俺の子以外、考えられない、というか、考えたくはなかったけど。ずっと遠距離で過ごしていただけに、不安になるわけで。
 もし、あの赤ん坊が俺の子だとしたら、それは、美輪がアメリカまで来てくれた、あの日のことになるわけで。

『プッ』

 ぐるぐると考えてた俺なのに、美輪には吹き出されてしまった。
 笑うことはないだろうに。
< 90 / 95 >

この作品をシェア

pagetop