おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件
 実家に戻ると、遼ちゃんのご両親も来ていて、大宴会になった。
 主役は遼ちゃんではなく、碧だけど。
 それでも遼ちゃんは、ずっと碧を抱っこして離さない。碧は大人しく抱かれていて、それを見てる私もすごく幸せだった。

「遼ちゃん、そろそろ碧、貸して」
「なんで?」
「ミルクの時間」
「あ、うん」

 碧を受け取って、私の部屋に連れていく。
 一人暮らしの頃の物は、戻ってくるときに、ほとんど処分してしまったけれど、実家にいた頃よりも荷物は増えていて、そのうえ、今は碧のベビーベットも置いてあって、余計に狭くなった。

「美輪、入ってもいい?」

 ドア越しに声をかけてきた遼ちゃん。

「いいよ」

 そろそろと入ってきた遼ちゃん。

「うわ……本当にお母さんしてるんだね」

 碧に母乳を与えている私を見て、しみじみと言うから、思わず笑ってしまった。

「遼ちゃんもパパなんだよ」
「うん」

 碧の頬をぷにぷに触る彼が、とても愛しくなった。



 年が明けて早々、遼ちゃんは私との結婚と碧の存在について公開した。
 事前に事務所の用意したマンションに移っていたので、マスコミに追いかけられることもなく、私は碧の世話で毎日を過ごした。
 そんなある日。


「美輪。結婚式、あげようか」

 ベビーベッドの碧をあやしながら、遼ちゃんがつぶやいた。

「えっ?」

 キッチンで食器を片付けていた私は、思わず振り返ってしまった。

「ん。美輪の花嫁姿、見たいし。なぁ、碧」

 人差し指であやす遼ちゃん。

「……でも」
「お義父さんや、お義母さんだって、見たいだろ。言わないだろうけどさ」

 実際、両親は何も言わない。
 でも、娘の花嫁姿は見たいだろう、とは思う。

「まぁ、身内だけでの結婚式だけで。披露宴とかはやらないでさ」
「遼ちゃんは、いいの? それで」
「美輪がよければ、それでいい」

 碧から目をはずして、にっこりと微笑んだ。

 遼ちゃんが渡米した頃は、帰ってきたら結婚式できたらいいなって思ったけど。
 実際は、碧の世話でいっぱいいっぱいで、そんなこと考えてもいなかった。
 遼ちゃんから言ってもらえたことが嬉しくて、涙が出てきた。

「遼ちゃん、ありがとっ…」

 気が付くと、彼が優しく抱きしめてくれた。

「本当は、寺沢さんからも言われたんだ。ちゃんと式、あげろって」

 寺沢さんの別れた奥さんは、結婚式をあげる暇がなかったことで、ずっと奥さんにぐずぐず言われてたとか。

「そんなことで別れるはめになりたくないし」

 そう言ってニヤニヤしてる遼ちゃん。
 呆れた顔で見上げると。

「それに」

 軽く唇にキスをした。

「早く二人目も欲しいから」

 な、なぬっ……!?

「ねぇ」

 妖しい眼差しの遼ちゃんとは対照的に、ベビーベッドから、碧のキャッキャと笑う声がする。

「美輪のこと、食べてもいい?」

 パパになった今でも、コテリと首を傾げて見せる姿はやっぱり王子様で。

「もう、我慢できないんだけど」
「……しょうがないなぁ」
「フフッ。いただきます♪」

 私はそんな遼ちゃんを愛してる。



 ▶ END ◀
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