婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
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仕事には追われているものの、魔獣被害の報告はなく平和な午後のひとときだった。
執務机で書類にサインをしていたメイナード・ブラックウェルは、側近のルーサーが「王家から火急の連絡です」と声を出して読みはじめた手紙の内容に眉をひそめた。
「今、結婚って言わなかったか?」
ルーサーは主君の機嫌が悪くなったことに気づきながらも、平然と続きを口にする。
「そうみたいですね。花嫁はアークライト侯爵家の令嬢アレクシア様だそうです」
「……その名前は聞き覚えがある。王太子の婚約者のはずだ」
メイナードの声が一段低くなった。
「王太子妃は、ストライド子爵家のオーレリア様に変更になるそうです。それでお役御免になったアレクシア様の輿入れ先にメイナード様が選ばれたって訳です」
「なぜ俺なんだ? ほかにもっとよい嫁ぎ先があるだろう?」