婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
ニコリと笑って答えたけれど、メイナードは納得いかなそうに見えた。

「旦那様、もう汗は流されたのですよね。新しい薬を塗りますね」

アレクシアはメイナードを椅子に座るよう促し、薬と包帯の用意をする。

彼の傷の治りはかなり早く、もう塞がってきている。

あと三日も薬を塗れば完治しそうだ。

「旦那様、少し腕を上げてください」

「ああ」

メイナードはアレクシアの言う通り、逞しい腕を少し上げる。

同じ体勢を維持するのは大変だが、彼は微動だにしないので、手当てがしやすく助かっている。

「では、包帯を巻きますね」

清潔な布に傷薬をたっぷり塗り傷を覆うとしたとき、アレクシアは違和感を覚えた。

些細な変化ではあった。けれど、見逃してはいけないこと。

「これは……」

ごくりと息を飲むアレクシアに、メイナードはすぐに気がついた。

「どうした?」

アレクシアはメイナードと目を合わせ、それから再び傷のある腕を見て言った。

「腕の文様の柄が変わっているようです」と。

普段あまり動じないメイナードもさすがに驚いたようだ。

「まさか……あり得ない、今までそんなことはなかった。母上についてもそうだ」

動揺するメイナードを見ているうちに、アレクシアも自信がなくなってきてしまった。

そのため、アレクシア以外でメイナードの肌を見慣れているルーサーの意見も聞こうと、ディナに彼を呼びにいってもらった。
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