婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「客観的に考えると、アレクシア様はおそらく王家の不興を買ったのでしょうね。噂では悪役令嬢と呼ばれているらしいし、体(てい)のいい追放なんですよ」

「追放? そんなことをしたらアークライト侯爵が黙っていないだろう」

驚愕するメイナードに、ルーサーは頷く。

「普通ならそうですね。愛する娘が追放なんて簡単に従えないでしょうし、一門の顔に泥を塗られるようなものですから。ただ悪役令嬢なんて呼ばれている娘だったら追い出したいと考えるかもしれません。まあこの件に関しては不審な点が多いのでこれから王都に行って調べてきますよ」

「分かった」

納得いかないことだらけだが、なんの情報もない今、判断はできない。

ルーサーの言う通り調査が先だろう。

「すぐに発ち、明後日までには戻れ」

「えー相変わらず人使いが荒いですね」

「お前なら王都との往復なんて一瞬だろう」

ルーサーは高度な空間魔法を自在に操る。自分ひとりなら転移など容易い。

「分かりましたよ。花嫁を迎える準備は、女心の分からないメイナード様ひとりに任せられませんからね。なるべく早く戻ってきます」

ルーサーはそう言うと煙のように姿を消した。早速どこかに転移したのだろう。

ひとりきりになった執務室で、メイナードは再び溜息を吐いた。それから席を立ち、ルーサーが読んでいた手紙を手に取り自ら目を通す。
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