婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
ルーサーからは強い信念のようなものを感じた。それはメイナードを思う忠誠心から来るもの。

だからか、メイナードの為ならアレクシアを犠牲にすると言われたようなものなのに、怒りは少しも沸いてこなかった。

大切な物を守りたいという気持ちは共感できるから。

「ルーサー、私のことは気にしないでください。私も旦那様の役に立てた方が嬉しいですから」

「何を言うんだ……」

メイナードが唖然とした表情になる。

ルーサーへの怒りは消えて、ただ困っているように見える。

「旦那様、十年解決の道が見つからなかったのに、ようやく希望が見えたのかもしれないのです。今はルーサーの言う通りなんだってしましょう」

「だが危険が……」

「そうですけど実際怪我をしたのは旦那様ですよ? ルーサーに怒るとしたらご自分が怪我をして痛かったからということになりませんか?」

そう言うとメイナードはぐっと言葉に詰まった。

屁理屈だと跳ねのけられるのに、引いてくれたようだ。

「アレクシア様が勇気と柔軟性のある方で助かりました」

「はい。目的のためなら多少のことでは怯みませんよ」

市井暮らしも、蔑ろにされる日々も経験済みだ。簡単にはへこたれない自信がある。

「それでルーサー、旦那様の腕の変化はどう見てますか?」

「これも仮定ですよ。これから詳しく調査する必要がありますが」
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