婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「いえ、当面は今の薬でほんの少しだけ範囲を広げてみましょう。あまり強いものだと効き目が強すぎて、逆にメイナード様の体に障るかもしれないので」

「あ、そうですね。ごめんなさいつい焦って」

ルーサーは微笑んだ。

「アレクシア様は優しいですね。焦るほどメイナード様を心配してくださっているのですから」

「それは当然です」

「では後はおふたりで話してください。私はここで失礼して調査に入りますから」

「ああ」

「よろしくお願いします」

ルーサーはうやうやしくお辞儀をしてから部屋を出ていった。


ふたりきりになると、メイナードは気まずそうに口を開いた。

「危ない目に遭わせて悪かった」

「その話はもういいんですよ。それよりも旦那様の悩みが晴れる可能性があることが嬉しいです、がんばりましょうね」

心から伝えると、メイナードは俯き、ぐっと拳を握った。

「旦那様?」

「ありがとう……」

「え?」

よく聞こえなくて聞き返すと、メイナードは顔を上げて再び言った。

「感謝している。本当にありがとう」

「え、そんな……だって当然です。私は旦那様に嫁いできたのですから」

こんなにはっきりと感謝を伝えられるのは初めてで、メイナードの真っ直ぐな心が現れているような黄金の瞳に見据えられると、鼓動が高鳴りどうしていいのか分からなくなる。
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