婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「俺はよい夫とは言えない。自分が世間でなんと言われているのかも理解している。そんな男のところに嫁ぐことになったあなたは不幸だと思っていた」

初めて聞くメイナードの本音。アレクシアは驚きと焦りで混乱した。

「私は、不幸だなんて思っていないです。だって私は……」

旦那様が好きなんです。そう伝えたいのに、勇気が出なくてなかなか言い出せない。

そんなアレクシアの葛藤に気づくはずもないメイナードが告げた。

「でも俺はあなたを妻にできて幸せだと感じている。本当にありがとう」

「だ、旦那様……」

それはアレクシアに少しは好意を持ってくれているということだろうか。

「これからは、名前で呼んでくれないか? 俺もあなたをアレクシアと呼ぶ」

「な、名前?」

「ああ、メイナードと」

アレクシアの心臓はどきどきと激しく波打ち、気が遠くなってしまいそうな程だった。

あのメイナードが優しく微笑み、名前を呼べと言う。

(嬉しいけど緊張してしまう)

気恥ずかしくて顔に熱が集まってるのが分るので顔を上げられない。

それでも夫の希望に応えて口を開いた。

「……はい、メイナード様」

メイナードは本当に嬉しそうに微笑んだ。
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