婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
内容は聞いた通りのもので、新たな情報は見つけられなかった。

メイナードは数年前に会ったきりの王太子イライアスの姿を思い浮かべた。

太陽のような黄金の髪にオールディス王家特有の黄金の瞳を持つ、見目麗しいが親しみのない従弟。
幼い頃から未来の国王としての自覚を持っていたようで、一段高いところからメイナードを見下ろしていたのをよく覚えている。

(あいつはこの件に賛成しているのか?)

王太子妃に選ばなかったとはいえ、幼い頃から交流があったはずの令嬢だ。

情のようなものが生まれていないのだろうか。

(それとも、王太子でもかばいきれないような犯罪に手を染めたのか? ……いや考えても無駄だ)

今はルーサーの報告を待つしかない。

心が落ち着かないのは、思いがけない話を聞いたせいだ。

メイナードは無理やり頭を切り替えて、仕事に戻った。


二日後。ルーサーが王都から帰還した。

「メイナード様、戻りました」

「ああ、ご苦労だった」

ルーサーは遠出をした疲れは見せずに、メイナードと自分のお茶を淹れてソファーの前のローテーブルに置く。

「このお茶、王都で今流行ってるらしいですよ。試飲したらメイナード様の好きそうな味だったので大量に仕入れてきました」

「……なにをしに行ったんだ?」
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