婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「そうか。オーレリアは真面目だな」

多少、間違えたとしても、自分達に文句を言えるものなどいないと言うのに。

「国中の貴族が集まる式ですから、慎重になるのは当然かと思いますが」

セラはイライアスのベッドを、いつでも寝られるように手早く整えた。

「そうなのか?」

「はい。誰も口にしませんが、心の中ではアレクシア様と比較しています。オーレリア様もそれをよく分かっているのでしょう」

イライアスは笑みを消し、眉根を寄せた。

「比べられたからなんだと言うのだ。オーレリアがアレクシアに劣るはずがないだろう」

「殿下や世間の評価は別として、高位貴族の令嬢として生まれ育ったアレクシア様の振舞いは完璧です」

イライアスはますます機嫌を損ねた。

不快な発言をするセラを追い出してしまいたくなったが、ぐっと堪えた。

元々セラは母である王妃がイライアスに付けた女官なため、下手なことをするとすぐ干渉してきて面倒なことになるのだ。

その母は父と同時期に体調を崩して以来、なかなか体力を取り戻せないでいる。

明日の婚儀も国王と王妃は、婚礼の儀式に顔を出すだけでその後の祝宴には出ない予定だから、イライアスとオーレリアが最高位の存在になるため、かなり忙しくなるだろう。

セラに不満をぶつけている暇はない。

イライアスは溜息を吐いてからベッドにもぐりこんだ。

「お休みなさいませ」

セラは礼をして部屋の灯りを消す。
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