婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
パタンと扉が閉まる音がして、人の気配がなくり、イライアスは目を閉じた。

しかしこびりついた不快感が気持ちを重くさせる。到底眠れる気がしなかった。

「セラめ……あいつが余計な発言をするからだ」

せっかく気分がよかったのに、嫌なことを思い出してしまったではないか。

イライアスのもっとも嫌うふたり。メイナードとアレクシアの姿を。

明日の婚儀にふたりは参列しない。

メイナード爵には、不本意ながら招待状を送っている。しかしメイナードは魔物の動きが活発なため領地を出られないと、返事を寄越した。

アレクシアには当然元から招待状を送っていない。

「野蛮なメイナードには王都よりも魔物退治がお似合いだ。あの陰気な女は、怪我人の手当でもしていればいい、治癒魔法くらいしか長所がないのだからな」

と言っても、イライアスはアレクシアの治癒魔法について、メイナードに知らせていないから、気づいていればの話だが。

報告では城の作業場で薬作りをしているらしいから、魔法についてはなんらかの事情で隠しているのかもしれない。それにしても薬作りとは。

「はは、侯爵令嬢が落ちぶれたものだな」

あれこれ考えていたら、気分が上がってきた。イライアスは満足して目を瞑り眠りに落ちた。
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