婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
オーレリアが微笑みながら、イライアスの体をそっと押す。

「オーレリア?」

「休む前に、少しお話をしてもいいですか?」

「あ、ああ、そうだな。今日はゆっくり話せなかったからな」

少しガツガツし過ぎたか。初夜も大切だが心の交流も疎かにできない。

「イライアス様がお好きなワインを用意しました。どうぞ」

オーレリア自ら、グラスに注いだワインは血の様な赤。

「いいワインだな」

口に含むと感じる芳醇な香り。さすがオーレリアの選択だ。

「気に入った、どこのワインだ?」

「母の生家で作っているものです。よろしければ取り寄せますが」

「ほお。それはいいな、頼もうか。王家御用達にしてもいい」

「まあ、ありがとうございます。母もきっと喜びますわ」

オーレリアは顔を輝かせる。こうやって喜びを素直に表すところに惹かれているのだとイライアスは感じていた。

感謝をされると嬉しくなる。もっともっと喜ばせてやりたいと思う。

「オーレリア、明日から離宮で過ごそう」

「離宮? 黄金宮のことですか?」

「そうだ」

黄金宮はオールディス王家特有の黄金の瞳を意識して建てられた、規模は小さいながらも煌びやかな城だ。

オーレリアも、離宮を気に入っていたはずだ。

だから大喜びするかと思っていた。

しかし予想外に、オーレリアは戸惑いの表情になった。

「明日は、公務が入っているのではありませんか?」
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