婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「そうなのですか?」

メイナードは一瞬ためらったものの、アレクシアを真っすぐ見つめた。

「俺は君を傷つける者は許せないんだ」

「メイナード様……」

真摯に見つめられて鼓動がせわしくなる。

メイナードがアレクシアを大切に想ってくれているのを実感して、喜びと気恥ずかしさがこみあげる。

(メイナード様……好きです)

王太子の婚約者として、常に慎み深くあれと教育されたアレクシアにとって、はっきりと口にするのはとても難しいけれど、それでも心の中ではいつも訴えていた。

メイナードはそんなアレクシアを見て、少し困ったような顔になる。

「そろそろ休もう」

メイナードがこう言ったときが、会話の時間の終わりの合図だ。

アレクシアは自分の部屋に戻って眠ることになる。

「……そうですね」

もう少し話したかったと内心がっかりしながら、アレクシアは使ったカップをワゴンに下げた。
アレクシアの部屋まではメイナードが送ってくれる。

すぐに部屋に到着してしまい、扉の前で彼は言った。

「おやすみ、アレクシア」

「おやすみなさいませ、メイナード様」

アレクシアが部屋に入り扉を閉めると、足音が遠ざかっていった。


「アレクシア様、どうしたのですか?」

扉の前でぼんやりしていると、ディナに声を掛けられた。

「い、いえ、なんでもないの」

アレクシアは早歩きで部屋の中央のソファに行き、腰を下ろした。
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