婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
メイナードは暗い気持ちになった。

自分が理不尽な扱いを受けることには慣れているが、か弱い令嬢がつらい目に遭っていると思うとやるせない。

「まあ令嬢が父親に愛されていたとしても、結果は変わらなかったでしょうね。王命のうえに王太子がかなり乗り気のようですから」

「イライアスが? 自分のために長年尽くして来た相手をなぜ追放しようとする」

「想い人のオーレリア子爵令嬢を妃にしたいというのが婚約解消の動機でしょうが、それだけでなく、政略的に定められた婚約者のアレクシア様をかなり嫌っているようですね」

ルーサーはそう言いながら宙に手を掲げた。

彼の手が淡い緑の光りに包まれる。次の瞬間には、小さな額縁が現れた。

これもルーサーが得意としている空間魔法のひとつ。彼が言うには異空間に大きな部屋を作り、倉庫代わりにしているそうだ。出し入れはいつでもどこでも自由で、時間の制約も受けないかなり便利な魔法とのこと。

「それはなんだ?」

「アレクシア様の姿絵です。メイナード様に見せたくて手に入れました」

「盗んできたのか?」

慌てるメイナードに、ルーサーが飄々と返す。
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