婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
呼びかけるよりも早く、アレクシアが高い声をあげた。まるでやけになったような大きな声。
だけど彼女の顔は真剣で、目には涙が滲んでいる。

「だから……ほんとうの妻にしてほしいです」

メイナードはショックを受けて目を見開いた。

なんてことを言わせてしまったのだと、激しい後悔が襲ってきたのだ。

その台詞は自分から言うつもりでいた。それなのにアレクシアが言い出す気配に気づかず遅れをとった。

女性から、しかも高位貴族令嬢として育ったアレクシアが言うには、どれほどの勇気が必要だったことだろう。

自分だって、かなりの決意の下に伝えるつもりだったのだ。

後悔してもしきれないし、挽回は難しいかもしれないが……。

「メイナード様、私は……」

「アレクシア」

彼女の言葉を、メイナードは遮った。

「はい……」

「不甲斐ない俺を許してほしい」

「え?」

メイナードはソファーから立ち上がり、アレクシアの前に跪いた。

「アレクシア、俺はあなたを愛している」

「え……あの、メイナード様?」

「俺に好かれても困るだけだろうと、なかなか言い出せなかった。幸せにする自信を持てなかったんだ。だがそんな情けない自分は、今ここで捨てる。アレクシアだけを愛しこの人生をささげると誓う。だから俺の本当の妻になって欲しい」

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