婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
だけど怖いとは思わなかった。

大きな手がアレクシアの小さな手を絡めるように握る。

そして再び始まる深い口づけ。

お互いを求める行為は、その後しばらく終わらなかった。



翌朝、アレクシアが目覚めたときに、メイナードの姿はすでになかった。

彼が横になっていた部分は温もりもなくすっかり冷えているから、大分前に起きたのだろう。

昨夜はメイナードと数えきれないキスを交わした。

アレクシアは夢中になり、彼の広い背中に腕を回して縋りついていたが、いつの間にか眠りに落ちたようで、その後に言葉を交わした記憶がない。

今日は昼過ぎに王城に向かう予定でいるが、その前にルイが訪ねてくれることになっている。メイナードは同席しないのだろうか。

そんなことを考えながらベッドを降りて、部屋に造り付けの浴室に向かった。

実家にいた頃も、ブラックウェル公爵家に嫁いだ後も、入浴はひとりで行っていたので、素早く動ける。

丁寧に体と髪を洗ってから浴室を出たところで、メイナードが部屋に戻って来た。

「メイナード様、おはようございます」

「おはよう」

メイナードは爽やかな笑顔になった。

部屋に差し込む朝の光が、彼を照らす。

黄金の瞳は優し気で美しく、アレクシアは自分の夫に対してときめきが止まらない。

「あ、あの、どこかに行かれていたんですか?」

「庭で剣の素振りだ。一日でもサボると体が重くなるからな」
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