婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「はあ……本当になにも知らないんですね」

ルーサーは肩をすくめ、メイナードを見た。

「俺から説明していいですか?」

「ああ、頼む」

「では……始まりは今から五代ほど前の王です。彼は王子だった頃、異界に繋がるという間の森に強い興味を持ち、多くの時間をブラックウェル領で過ごしていました。王位には程遠い第八王子という身分から止める者もいなかった。その王子はある日間の森でひとりの女性と出会うんです。それが今、王太子殿下の体を蝕む呪いの始まりでした」

(え? どういうこと?)

アレクシアは驚愕してルーサーを見つめた。

彼は今、呪いの正体について流暢に語っているのだ。

(どうして? 誰も原因を知らないと言っていたのに)

さらに驚くのはメイナードが少しも動揺していないところだ。つまり彼も知っていたと言うことになる。

(私だけが知らなかった?)

突然輪から外されたような心細さと悲しみが押し寄せてきた。

頭がクラクラして立っていられない。するとメイナードがアレクシアの腰を抱き寄せた。

まるで大丈夫だとでも言うように。決して離れないようにしっかりと自分に引き寄せる。

(わけが分からない……でも)

アレクシアはメイナードに身体を預けた。
蚊帳の外にされたことで傷ついてはいるけれど、でも今はふたりにすべてを任せようと思ったのだ。
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